とうちゃく

「ここが、うわさのおいしいほしだねっ!」

 意気揚々と、そして、平坦なイントネーションで聞き取りづらい子供の声が辺りに響き通りがかる人の目を奪った。

 声の主は、その声に見合った風貌で、大きなフォークを持ち、<とーか>と書かれたエプロンをしていた。<とーか>というのは、恐らくこの子供の名前だろう。エプロンのポケットからは……キーホルダーかストラップのどちらかだろうか?ウサギの形をしたそれが覗いていた。

 「……とーかはこのほしでさいきょーになるんだから。」

 周りに行き交う人を眺めてそう呟く。その目には無邪気さを押しのけた闘志がむき出しとなった。

 

 とーかが第一声に発した噂の美味しい星――多分、そう言っていた。そうだと仮定して話は進める。――というのは、半分正解で半分間違いである。

 この星は、飽くなき食欲を満たそうとありとあらゆる星を回った者が見つけた辺境の惑星。このグルメなる者が未開の土地を開拓して食材を植え育て、食欲を満たそうとしたという、それまでは食物が盛んに取れたと言うわけでもない星である。

 グルメな彼、いや、彼女か?その者が異邦人を集め、土地の開拓に当たった時、招かれざる者までをもこの土地に引き寄せてしまった。

 

 作物を食い荒らし、グルメな者の野望を妨害する虫。ただの虫ではない。来訪者の姿・能力・思考や言動を模倣し、1つの野望が費えようとしていた。

 グルメなる者は考えた。この土地に全てを賭けるつもりなのだろうか?投資や苦労を一切厭わないグルメを求めるための機構、美食愛好会を発足し、開拓者として人の募集を行ったのだ。

 

 ある程度開拓が進んでいるのだから、美味しいものが集まりつつはあるが、まだ、美味しい星とは言えない。だが、これからそうなろうとしている星である。

 

「あれ?そういえば、どこにいるのかなー……。」

 とーかはポケットへ使える方の手、つまり右手を入れて手紙を取り出した。

 その手紙を簡潔にまとめると、このとーかという子供に1人の者を護衛して欲しいという用件だそうだ。それと一緒に1枚の写真が入っていた。多分、これが守るべき対象なのだろう。

 会場には多くの人や人ならざる者……中には何故動いてるのかと思ってしまう生物をも含んでいた。

 辺りを見渡していると、突然目の前に人が現れ、とーかには大きいとも思える袋を貰った。

貴方に”ダイス”を託そう。移動については基本的にこの正六面体のダイスを使って決定することとする。これは、各々が無作為に地方へ解散し開拓してもらいたいが為である。

 とーかは、話を聞いてなかった事に気付き焦るが、マニュアルが入っていて安堵する。

「……あれ?」

 中にはマニュアルの他に、カードが数枚とダイス、そして、見覚えのある封の手紙が入っていた。

「では、検討を祈る!」

 響いた声を聞き入れる事無く、自分がやって来るきっかけになった手紙と同じ装飾の手紙を開く。

 

 

・平坦なイントネーション

 世の中にはイントネーションの抑揚が全く無い地域があるらしい。簡単に言うと、「橋」「箸」「端」は「は」か「し」のどちらを強めたかで判断されるだろうが、これが全く同じイントネーションで表現する地域が確かに存在する。

 文脈で判断するしかないが、単語だけ飛ばされると正直こちらとしては理解に苦しんでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・何故動いてるのかと思ってしまう生物

 詳しくはサイトに飛んで欲しい。本当に訳の分からないのもいる。下部の「Last Order」のリンクから飛んでいただくと「List」の欄がある。そこでキャラクターを眺めると楽しいかもしれない。